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冬のイカル
冬は朝が遅い。ようやく外が明るくなるとピピョピーピョーピピョピーピョーとよく通る乾いた声で鳴く小鳥のさえずりが聞こえてくる。毎朝聞こえる。鳴いているのはイカルでその鳴き声がもうすっかり目が覚めているのにぐずぐずとなかなか起きる決心がつかない冬の寝床の中ではどこか妙に心地好い。聞こえるのはわずか数分だがどこにいるのか姿を見たいときは布団から出て窓の外の鳴き声がする方を探す。向かいの高校の校庭ですっかり葉を落としたイチョウの木の枝に一羽がとまっている。それがいつも同じ木だからきっと同じイカルなんだろう。
2025年1月1日 |
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2024年1月14日 |
小鳥が早朝にさえずる理由はまだ気温が低い明け方は鳴き声が遠くまでよく届くからだという。音の速さは温度の関数で気温が低ければ速度は遅い。一方で音は縦波だが気温が低いと大気の層での屈折が小さくて遠くまで届きやすい。同じ理由で夏より冬の方が音は遠くまで届く。イカルが冬の朝早くにさえずるのは理に適っていると言えるが晴れの朝には早い時間にさえずり曇りか雨あるいは雪だとそれが遅いのは明るさもいくらか関係しているのかもしれない。ちなみにイカルはスズメよりよほど大きいから小鳥と言えるのかとやや疑問に思いながらもぼくは小鳥の中に入れている。
イカルは一羽ではない。日中に数羽がイチョウの枝にいるのを見かける。みんなで地面に降りてきてキョロキョロしながら落ちている木の実か種かなにかをついばむ。ついばみながらピョッピョッピョッピョッとせわしく鳴いてケンカもする。
2025年2月3日 下の写真で左に二羽が重なって見えるのはケンカしているからで餌の取りあいのようだった |
イカルが筋向いの木で鳴くのをはじめて聞いたのは去年の冬のことでそれ以前には覚えがない。その去年も春から秋にかけては鳴き声を聞くことがなく姿を見ることもなかった。イカルは留鳥だが冬は暖地に移動するともいう。金沢は暖地とは言い難いからこれもきっと気候変動が影響しているのだろうと思うのは自然のちょっとした変化に温暖化を結びつけるのがここ数年の癖になっているからででもこういう変化なら温暖化も悪くないと思うのかというと・・・まったくそうは思わない。
3月になってこのごろ気温も少し上がってきたからイカルはそろそろどこかへ行ってしまうのだろうか。早朝のさえずりが聞こえなくなるのは寂しい。でもすぐに忘れるのにちがいない。桜が咲くからだ。その前にウォーキング途中に見るあんずが咲くはずだが今年は梅すらまだ蕾のままだ。 2025年3月11日 虎本伸一(メキラ・シンエモン)
写真 虎本伸一
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